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INVITATION あの人に聞く国際力とは? VOL.05 香港人歌手 イーソン・チャン

規律正しくてユニークな国、日本。ここに来ると僕も、いつもよりきちんとした人間になれる気がします。

現在、中国語圏で絶大な人気を誇るシンガー、陳奕迅(イーソン・チャン)。香港で生まれ、広東語を母国語としながらも、10代の頃過ごした英国で学んだ英語、北京語(國語)でも自在に歌い、語る彼の次の目標は日本語のマスターだという。彼の考える日本人力、国際力について語ってもらった。

日本というとまず思い浮かぶのが、とても特殊な文化を持った国だということと、その規律正しさです。幼いころ日本に来たときは、道路で信号が赤になると、車が通っていなくても必ずみんな立ち止まって待っていることに驚きました。車が通ってなければ赤でも渡ってしまいがちな、よくいえば柔軟、悪く言うとちょっとルーズな香港とはずいぶん違うなあというのが印象です。

「きちんとした国」というイメージは、「燃える」「燃えない」「リサイクル」などで整然と区分されているゴミ箱にも現れていますよね。そういうところが、とても好きです。

自分自身は規律正しい人間ではないけれど、日本に来るとそういうまわりの雰囲気に影響されて、僕も自然といつもより几帳面になれるような気がしています。

昨年来日して「Pax Musica 2009」に参加したとき、初めて1曲、日本語でフルコーラス歌いました。玉置浩二さんの『MR. LONELY』です。広東語のカバー曲として10年以上前に出したCDにも収録しているくらいとても好きな曲で、以前自分のコンサートで、半分を日本語で歌ったこともあります。今回も初めはそうしようかと思ったのですが、日本語を教わっている先生である友人に歌詞を全部アルファベットで書き出してもらうだけでなく、改めて歌詞について説明をしてもらうと、途中で広東語に変えるとムードを壊すし、最後まで日本語で歌ったほうが曲の世界を伝えられると思いました。

とはいえ、すべて日本語で歌うのは僕にとってはすごく難しいこと。かなり努力しなくてはなりませんでしたが、一生懸命取り組むことができれば、もし成功しなくてもきっと最後には満足できると信じていました。幸い、かなり集中して歌うことができたおかげで、ほんの少し発音を間違っただけでやりとげることができました。

2009年11月8日、東京国際フォーラムで開催された「PAX MUSICA 2009」に参加。オリジナルバンドとともに来日し、英語、日本語の曲を含め7曲を披露。熱のこもったパフォーマンスを繰り広げた。(C)Office Mullen

当日までは不安でしたが、前日に日本に来て、空港で思いがけずファンの人たちに温かく歓迎してもらったり、この国の雰囲気を肌で感じたりしたことで、日本語の歌の世界にスムーズに入っていけたように思います。歌う前に「これから歌う曲は……」と紹介したときも、観客席から「おおーっ……」という反応が返ってきたのですが、一瞬のことなのに皆さんの声がぴったりそろっていて素敵でした。そういうまとまりのいいところが日本の魅力、日本らしさですね。そんな雰囲気が、日本語の曲の世界に気持ちを集中する助けになりました。

僕はいつも“Think globally, act locally”という考え方を大事にしています。頭で考えるときには壁を作らずに広い視野を持って、そして行動するときは直面している時間や場所から逃げないこと。

人間の世界には、人種や貧富などたくさんの境界があるけれど、絶対に越えられないのは、男性と女性という(身体機能的な)違いだけのはず。もし、グローバルに生きようとするなら、いろんな境界を越えて行動し、視野や地平を広げていくこと、正しい意志を持って挑戦する気持ちが大切だと思っています。

例えば中国大陸に行くとサソリ焼き料理が出てくることもあるけれど、嫌だと思ってもまずは試してみる。好きじゃなかったら次からやめればいい。とにかく、初めての事や物に背を向けず、心を開くころから始めてみること。そうすれば、異国を訪れ、違った空気に触れると新たな力がわいてくるはずです。

いずれ、日本語でアルバムを作りたいと考えています。そのためにはもっと日本語を勉強しなくてはなりませんが……。平仮名を覚えたり、会話のフレーズを練習したり、やることがいっぱいあります。ちゃんとしゃべれるようになって、歌詞を理解できるようになったら実現したいですね。

イーソン・チャン 陳奕迅 Eason Chan
1974年香港生まれ。95年に留学先のロンドンから一時帰国して参加した香港の新秀歌唱大賽で優勝、翌年アルバムデビュー。現在、中華圏ナンバーワン歌手。中国・香港・台湾では数々の音楽賞を総なめにしている実力派。2007年には、Eason's Moving On Stage と題した世界ツアーを香港からスタート。中国各地、台湾、米国、マレーシアなどで熱狂的に迎えられた。2009年11月に日本でファンクラブを設立。公式ブログ(http://ameblo.jp/easonchan)も開始し、日本での活動を広げつつある。

【ファンクラブについてのお問い合わせ先】
オフィスマレン http://www.office-mullen.com/

上五樓的快活
2009年9月25日発売 最新アルバム(北京語)
アルバムタイトルは、イーソンの愛用するレコーディングスタジオが5階にあることからつけられた。ふと頭に浮かんだメロディーを元に作ったというイーソンの自作曲「給」、初めて台湾語曲に挑戦した「我甲」など計11曲を収録。


PHOTO:野地康之(のじ・やすゆき)
TEXT:柳田京子(やなぎだ・きょうこ)

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