“大手町の湯”開発秘話

三菱地所プロパティマネジメント株式会社

 最初のきっかけは、丸の内で働く方や年々増え続ける観光客の方の手土産として、“丸の内に来たらこれ!”という名物土産を検討していたことになります。そんな折、2015年10月大手町に温泉が湧き、温泉→温泉の素→お土産になる!と発想しましたが、当社にとって入浴剤を企画・販売することは未知の領域であり、手探りのスタートでした。
 製品化に関しては入浴剤シェアトップのバスクリン様のお力を借りたいと、お願いに上がりました。そもそも“温泉の素”と“入浴剤”は違うということをその時初めて知るなど、何も知らない私たちにかなり不安を覚えていらしたと思うのですが、こちらの思いを汲んで引き受けて下さいました。
 商品化にあたり、まずはバスクリンの方々に大手町温泉を体験頂き、さらには丸の内エリアの街並みをご案内しました。大手町温泉自体は大変珍しいタイプの温泉で、とろみ感のある湯ざわりや湯色、湯上り後の温かさが持続する特長を挙げて頂き、商品開発を進めて頂きました。しかしながら、商品のコンセプト開発には時間を要しました。丸の内には、高層ビルが建ち並ぶビジネス街、様々な店舗が軒を連ねるショッピングの街、緑が多い丸の内仲通りなど多様な側面があるため、どこに軸を設定して街のイメージを伝えるか、議論を重ねました。

そして、17年続く丸の内ならではの冬の風物詩「丸の内イルミネーション」の“シャンパンゴールド”と、大手町温泉独特の“琥珀色”の湯色を軸に打ち出すことで、丸の内ならではの商品になると思い、製品化に繋げました。湯色にこだわったため、タイトなスケジュールの中、バスクリンの方々には試行錯誤して頂きました。そして、17年の仕事納めの日につくばにある研究所に伺い、会議室で丸の内イルミネーションのサンプルを点灯し、その場で最終調整の上、なんとか湯色が決定しました。さらに香りについても、丸の内らしく、コンサバだがありきたりではないもの、というところでただの柑橘ではなく、和柑橘をオリジナルで調香して頂き、「大手町の湯」が完成しました。
 次に、卸業という初めての取り組みが待っていました。日頃、丸の内エリアにご入居いただいているテナント様に、こちらも一から教えていただきながら、10以上もの店舗様でのお取扱いが決定した時にはホッとしました。
 他にも、コストを抑えつつもパッケージから煌めきが感じられるようにと工夫を重ねて下さったデザイナーや印刷会社の皆様など、多くの方々のご理解とご協力があって、販売開始にこぎつけることができました。
 この商品が、今後更に丸の内を盛り上げていくツールのひとつになればと考えております。

三菱地所プロパティマネジメント株式会社「大手町の湯」担当一同

株式会社バスクリン

 三菱地所プロパティマネジメント様から、ご連絡をいただいたのは2017年1月のことでした。以前より、全国的にも珍しい含ヨウ素泉の温泉が東京の中心部である丸の内に湧き出たというニュースを見て興味は持っていましたが、まさか製品化のご相談がくるとは思っておらず、たいへん驚いたことを覚えています。
 何度も打ち合わせを重ね、一緒に弊社のつくば研究所で何種類もの試作品をバスタブに溶かして確認したりと、開発を行う中で様々な試行錯誤がありました。その一方で、他社の方と一緒に一つの製品を作っていくという作業は、とても楽しい経験でもありました。
 この『大手町の湯』が、丸の内の良さを日本全国に、更には世界中に伝えるための一助となれば、こんなに嬉しいことはありません。多くのお客様に長く愛される製品になることを私共も願っております。

株式会社バスクリン 特販室 室長 中田 泰幸 
(※開発当時:営業本部 販売サポート室 サポート室長)
温泉ソムリエ、温泉入浴指導員

 今回のお話をいただいた後、私たちも実際に大手町温泉に入って、泉質や色などを自ら体感し、製剤プランを検討しました。泉質は高張性のナトリウム―塩化物泉。弊社では、塩分濃度の高い泉質をモチーフとして入浴剤を作ることが少なく、また製品化までの時間も限られていたことから、一時は製剤化は困難ではないかとも考えました。
 しかし、丸の内をより良い街にしたいという熱い思いに触れ、何とか良い製品を作りたいと、次第に強い使命感を感じるようになりました。試行錯誤を重ねて誕生した『大手町の湯』は、湯ざわりや色など、大手町温泉のお湯の良さを可能な限り表現した自信作です。日本らしさをイメージした和柑橘の香りも、調香師である私のこだわりを存分に詰め込んだ、世界に一つだけのオリジナルの香りです。
 この真心こめて作った『大手町の湯』が、多くの皆様にご愛顧いただけることが、開発者にとってはこれ以上ない幸せです。

株式会社バスクリン 製品開発部 開発2グループ 佐々木 大輔

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