大手町・丸の内・有楽町の人々にスポットライトをあて、この“まち”の現在・過去・未来を紐解いていきます。
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丸の内をファッションの街に ビームス ハウス 丸の内が「街」と共に歩んだ19年

ビームス ハウス 丸の内
マネージャー兼スーパーバイザー 小栗隆太さん

2002年「丸の内ビルディング(丸ビル)」グランドオープン時に1階に出店したビームス ハウス 丸の内。当時オープニングスタッフとして勤務し、現在はマネージャーとスーパーバイザーを兼務している小栗さん。ビームスと丸の内が共に歩んできたこれまでと、ファッションという切り口から見えてきた街の変化をお聞きしました。

丸の内で誕生した「大人のビームス」

1998年、20歳で株式会社ビームスに入社し、4年後にビームス ハウス 丸の内オープニングスタッフとして、丸の内での勤務を開始した小栗さん。当時についてこう振り返ります。
「ビームスは原宿からスタートしたカジュアルなイメージが強いブランド。若い時は着ていたけれど、大人になって卒業したという方が多く、2002年頃に『大人のためのビームスを作りたい』という会社としての意向がありました。ちょうど同じ頃、丸ビルへのお誘いがあり、出店を決断したそうです」。
当時の丸の内はファッションブランドが少なく、あくまでオフィス街のイメージ。丸ビルオープン時のキャッチフレーズが「日曜日なのに、東京駅に降りていた。」ということからも、丸の内に「プライベート」で来るということがいかに珍しかったのかがわかります。
「たしかに、僕も店舗のオープン前にリサーチで来た時は、夕方になると人が歩いていない状況でした。ただ、社内では『お客様が来ないのではないか』という不安な気持ちはなく、むしろ『これから忙しくなるぞ!』という前向きな雰囲気でしたね。実際に話題性も抜群で、丸の内で働く方はもちろん、今まで来たことがなかったという多くのお客様にお越しいただけました。その結果、普段ビームスを着ない70代~80代の方や、観光で東京にいらした方など、様々な方がビームス、ひいてはファッションに触れる接点を丸の内から作り出せたのではないかと感じています。スタッフの立場からすると、当時は忙しすぎて店舗を回すことに精一杯だったというのが正直な気持ちですが(笑)」。

目まぐるしく過ぎて行ったオープン時。ノベルティーで配布したレザーのブックカバーは、思い出の品。
「内側に『BEAMS HOUSE』のロゴが型押しされていて、シンプルながら使い込むほど味が出るレザーの質感。ノベルティーとしてのクオリティーはかなり高いと感じています。19年経った今でも愛用しているスタッフがいるくらいですから。僕は丸の内で3年間勤務した後に他店舗に異動し、4年前に再び丸の内に戻ってきたのですが、このノベルティーを配っていた当時からお越しいただいているお客様が今も変わらずいらしてくださって、とても感慨深いです」。
オープン当初から様々な層のお客様が来店するからこそ、ビームスの店づくりも工夫したといいます。
「スーツなどのドレスものを中心に、トラッドスタイルの商品やデザイナーズ系の商品も取り揃え、どの店舗よりも幅広い商品展開をしていましたね。オープンして3年ほどでお客様層が固まり、『大人のビームス』のカタチが見えてきました。僕自身、丸の内店に来たのが24歳。元々はデザイナーズファッションに興味があって入社したので、当時はドレスものの知識がありませんでしたが、丸の内でじっくり学ぶようになり、スーツの素晴らしさを知ることができました」。

人と丸の内をファッションでつなぐ場、ビームス

現在、マネージャーとして店舗責任者、さらにはスーパーバイザーとして店舗の運営管理の仕事もしている小栗さん。しかし、自身のなかでは「接客」が原点だと語ります。
「洋服が好きでこの業界に入りましたが、好きなもの・良いものをより多くの方にご紹介することがこの仕事の醍醐味だと思っているので、いまも店舗に立って接客をしています。とくにビームス ハウス 丸の内は、多様なお客様がいらっしゃることから、プロとしての商品知識だけでなく、おもてなしにも力を入れています。スタッフに顧客が定着してくださることも多く、長年通ってくださる方もいらっしゃいます。僕の場合、他店で担当したお客様が、今は丸の内店に通ってくださっていますね」。
また、丸の内という場所柄からこんなお客様も。
「全国にお客様がいるのも特徴です。年に数回ビジネスの出張ついでにお越しくださいます。20年前だったら出張で来た方が丸の内で洋服を買うということはできなかったはず。でも今では当たり前の『丸の内の楽しみ方』になっている。ファッション分野でその一端を担っているのは、街と共に成長してきた証かなと感じています」。

現在のビームス ハウス 丸の内は、ドレスものを中心に大人カジュアルなファッションも揃う。また、充実したオーダーサロンや全国の店舗で唯一、タキシードとモーニングのレンタルサービスも行うなど、大人がゆっくりとファッションを楽しめる場となっている。
「ビジネスで丸の内に来ていた方が、引退された後も変わらずお越しいただくことや、親子二世代でご来店いただくことも。ビームスが丸の内と人をつなげる場として機能していることを嬉しく思っています」。

カルチャーが根付く街、丸の内へ

ビームス ハウス 丸の内オープンから19年が経ち、小栗さんから見た街の風景も様変わりしたと言います。
「カルチャーが根付く街になっていると感じます。2002年からファッションが広がり、2007年には新丸ビルもオープンして飲食店がさらに増え、まさに『街』としてどんどん拡張しているなと。また、周辺には三菱一号館美術館や皇居など、アートや自然に触れられてファミリーでも楽しめる。とくに、丸ビルに面した『仲通り』は丸の内の象徴的スポットになっていると感じます。夏はドライ型ミストが出て、冬にはイルミネーションで華やぐなど、季節ごとの演出を楽しめる街になりましたよね」。

Text: Emiko HishiyamaPhoto: MACHEdit: TOKYO GRAFFITI