大手町・丸の内・有楽町の人々にスポットライトをあて、この“まち”の現在・過去・未来を紐解いていきます。
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ビジネスの中心・丸の内で、ファッション業界から環境問題を発信し続ける理由

Allbirds
マーケティングディレクター 蓑輪光浩さん
丸の内店店長 有松大樹さん

2016年、アメリカ・サンフランシスコで誕生し、環境への配慮と快適さを追求したアイテムでZ世代を中心に絶大な支持を得てきたシューズブランド、Allbirds(オールバーズ)。2020年には日本一号店として原宿店、そして2021年6月に丸の内仲通り沿いに丸の内店がオープンしました。サステイナブルブランドとして世界をリードするAllbirdsが、日本の中心・丸の内で見据える未来とは。マーケティングディレクターの蓑輪さん、そして丸の内店店長の有松さんに、丸の内から発信したい環境への意思、これからの丸の内の可能性について、お話しを伺いました。

「サステイナブル」が一般的になった今、ファッション業界から環境問題のメッセージを発信していく

創業当初から環境負荷の低減を重要視しているAllbirds。シューズには、エシカルに生産されたメリノウールやユーカリなどを使用。梱包も極力シンプルにこだわるなど、プロダクト作りからお客様の手に届くまで、細部にわたって環境に配慮されています。

蓑輪さん「私たちは、ファッション業界が抱えている環境問題に対するメッセージを発信し続け、気候変動をビジネスの力で逆転したいという思想が根本にあります。化石燃料を極力使わない製造を続けることで、気候変動のインパクトを押さえていきたい。それこそブランド立ち上げの2016年当時、日本ではまだ『サステイナブル』という言葉が今ほど浸透しておらず、『意識が高い人が取り組むもの』という分断さえもありました。しかし、最近ではコロナを経てZ世代の方達を中心に、『より良い未来を創ろう』というムーブメントが起きています。人々の意識が大きく変わってきていると感じます」。

有松さん「現在は、2020年1月の日本上陸時よりも『サステイナブル』『エコ』というキーワードでAllbirdsを知っていただいている方が増えた印象があります。『流行りのスニーカー屋』という認識の方が強かった当時とは違い、今では多くの方が、環境へのアンテナを張り巡らせていらっしゃると感じます。そのような社会風潮の中で、Allbirdsの実店舗は、『モノを売る場所』というより『お客様とブランドを繋ぐ場所』という位置づけです。スタッフも、ブランドとしての目標やアクションをお客様にお伝えすることを意識しています」。

社会の意思決定層にメッセージを届けるため、日本の中心地、丸の内へ出店

コロナ禍を経て、日本人の環境意識への変革期とも言えた2021年、2店舗目の場所に丸の内を選んだのには、こんな理由があったそうです。

蓑輪さん「気候変動をビジネスの力で逆転していくためには、もちろん若い世代の方の賛同も必要ですが、会社や政治の意思決定層にも我々のコンセプトを届けなければなりません。そうすることで、あらゆる世代が同じ方向を見て、より良い未来を目指せるものと考えています。丸の内は日本のビジネスの中心地であり、政治の中心である霞が関も近い。日本の中核にいる方々や、家族連れでご来店される方が多いこの地に出店することは、意思を届ける場として最適だと感じています」。

丸の内店では、Allbirdsのモチーフでもあるシンプルで洗練された店舗デザインを引き継ぎながら、店内電力に再生可能エネルギーを使用するなど、環境への配慮をより一層強化した店づくりも特徴的です。

蓑輪さん「店内にはAllbirdsの取り組みをわかりやすくイラストにしたポスター装飾を施しており、お客様がサステイナブルな取り組みへ気軽に一歩踏み出しやすい雰囲気を演出しています」。

さらに、丸の内という街にインスパイアされた部分も。

有松さん「例えば、カウンターテーブルには天然素材の木を使用し、温かみのある丸の内の自然をイメージしています。購入時にサービスでお渡ししている靴紐のカラーも、行幸通りの銀杏並木の色と合わせたイエローにしています。また、丸の内店では商品をフルラインナップで揃えています。東京の玄関口として様々な地域からお越しいただいたお客様に、全てのモデルを触って体験できる場を提供したいという思いがあります」。

蓑輪さん「丸の内はランナーの方が多いこともあり、オープン記念モデルとしてランニングシューズ『Tree Dasher Relay』の限定カラーを発売しました。丸の内の自然からインスパイアされた深いグリーンカラーです。ご購入いただいた方には、徳島県の天然藍で染めたテンセル素材の手ぬぐいをプレゼントしていました。手ぬぐいは性別もサイズも関係なく、誰でも長くお使いいただけるもの。ノベルティーであっても我々の環境問題に対する意思を込めています」。

お客様と近隣店舗を巻き込んだコミュニティーづくりで、丸の内の未来を盛り上げたい

皇居などのランニングスポットが近いことからも、ランナーのお客様も多く訪れると言います。

有松さん「仕事前に走ってこられた方や、仕事終わりに今から走りに行くという方にも多くお越しいただいています。そういった需要から、丸の内店では、お客様を巻き込んだランニングコミュニティーを作っています。水曜日の閉店後、店舗にお集まりいただき、20~30人で皇居を一周したり、足の運び方や食生活まで含めたランニング講座を開いたり、和気あいあいとした雰囲気です」。

参加メンバーは、Allbirdsでランニング用のウエアやシューズをご購入いただいた方や、メンバーからのご紹介など年齢性別問わず多種多様。中には大会優勝経験もあるプロのランナーも参加されていて、丸の内の近隣の店舗も巻き込んで実施しているそうです。

蓑輪さん「近隣にはとてもユニークなお店も多く、食やファッションのブランドでも、我々と同じように『未来をより良くしたい』という意志を持っている店舗ばかり。丸の内では新参者ですが、どんどん輪を作れるよう、積極的な交流を心掛けています」。

有松さん「店舗間の横のつながりは強く感じています。出店した当時も、すでにAllbirdsを調べてくださっていた方もいて、とても好意的に迎え入れていただきました。仲通りの明るく清潔で開放的な雰囲気が、お客様やお店同士で交流しやすい雰囲気を醸し出しているのだと思います。丸の内は、商業施設、小売店、食事、自然、エンターテインメント……なんでも揃い、消費者側に回ってもいつもワクワクする街です。今後も近隣店舗と一緒に街を盛り上げたいと考えています」。

蓑輪さん「丸の内はビジネスだけでなくて、観光としても素晴らしい街に変化してきたと思っています。駐車場も充実しているので家族連れにもお越しいただきやすい。これからも文化が発展し、魅力的な街になるポテンシャルをまだまだ抱えていると思います。コロナ終息後は海外の方も巻き込んで、街のさらなる発展に寄与していきたいですね」。

Text: Emiko HishiyamaPhoto: Natsuaki YoshidaEdit: TOKYO GRAFFITI