受賞作品
グランプリ
谷中 佑輔 (京都市立芸術大学大学院)
《山の振動》(2014)写真、木、発泡スチロール、ラッカー、他
[審査員評価]
・後藤繁雄
2つの評価がある。1つは身体(肉体)を軸にして、見えるものを触覚的に広げる独自のシステムを生み出そうとしている点。2つめには、逆に現代美術のシステム的思考をやぶってストレートに新しい彫刻を生み出そうとしていることだ。
・今村有策
谷中の作品には、肉体的、触覚的な世界の認知と、視覚による抽象的な世界の認知という異なる認識が反目しあいながら絶妙なバランスで関係しあっている。この新しい感覚の領域を見つけ出す才能の登場を感じて喜ぶと同時に、彫刻の醍醐味のようなものを感じることができた。彼の今後の活躍に期待したい。
・小山登美夫
触覚と視覚という明確なコンセプトとインスタレーションの完成度による説得感。
今村有策賞
福本 健一郎 (東京藝術大学大学院)
《よろこび》(2013)キャンバス、アクリル、グリッター/《たのしみ》(2013-2014)キャンバス、アクリル、グリッター/《幸せポール》(2014)木、アクリル/《赤いベストの猫》(2014)木、アクリル、銀箔/《散歩する女》(2014)木、アクリル
[審査員評価]
やさしい時代のアーティストがいる。福本もそんなひとりだろう。アジア諸国で出会った明るい色彩、伝統的な染色や織物。新しい出会いに素直に反応して描かれた絵画にはどこか懐かしいのどかな空気がある。ここを入口にもっと深く自分に出会う旅はこれからだろう。その旅を見てみたいと思う。
神谷幸江賞
齋藤 杏奈 (女子美術大学大学院)
《No country 黄泉比良坂のキメラ》(2013-2014)ミクストメディア
[審査員評価]
不定形なキューブのような箱にも描かれた斎藤さんの作品は、絵画なのに飛び出している、絵画ゆえにとじ込められている、複雑な空間世界を生み出していました。月明かりにだけ照らされた怪しくて不安げな物語世界は、暗い影のかかる現代の比喩にも見えてきます。現代を生きる表現者の独自性とみずみずしさが伝わってきました。
後藤繁雄賞
藤井 マリー (京都市立芸術大学大学院)
《パーリングじゃ殺せない》(2012-)紙、ペン
[審査員評価]
描くという行為をオープンネスという視点でとらえ、またポジティブにエンパワーする姿勢もあり、絵画表現の可能性とアートの根源的な再生もはたして高く評価できる。彼女の描く世界は虚ではなく強度を持つ現実以上のものなのである。
小山登美夫賞
佐々田 美波 (京都市立芸術大学)
《スケッチ》(2013-2014)陶土、釉薬、顔料、紙、その他
[審査員評価]
人体や風景をモチーフに自身の完成をとぎすませ、形をつくる。とても誠実に制作する姿勢がすばらしい。フラジャイルでぎりぎりの表現でありながら、力強い存在感がある。
高橋明也賞
原田 圭 (東京藝術大学大学院)
《腸人間の瞬き》(2014)パネル、石膏、顔料、膠
[審査員評価]
一見するとデュビュッフェの表現にも似た、人体を扱った力のこもる出品作品。サイズも大きくなかなかの迫力である。でも原田さんの不思議な個性は明らかだ。古代の墓所から発見された人体がはからずも現代人のように臓器をそのまま見せていた―。観る者にそんな幻覚を起こさせる、忘却と生々しいリアルの狭間の透明な感覚。時間の中に蘇る豊かな自然。
建畠晢賞
笹岡 由梨子 (京都市立芸術大学大学院)
《anima/正義の料理人》(2013-2014)映像インスタレーション 7'02''/《anima/鯵とハーネス》(2013-2014)映像インスタレーション 7'02''
[審査員評価]
きわめて単純明快な人形劇仕立ての映像作品だが、それだけにプライベートな発想のユーモアが際立っている。手作りのアナログ的なセンスも面白い。高度な技術を駆使するメディアアートの時代に、かえってそうした方法が生きているように思われる。
[ゲスト審査員] 倉本美津留賞
北島 麻里子 (東京造形大学)
《私のこと》 (2014) ミクストメディア
[審査員評価]
作品に対してまさに“身を削っている”。そのシンプル・イズ・ストロングを、自分のアートの評価軸である『アーホ』度の得点の高さで選びました。今回の展示のために、作品を描き直したことに対する驚き(あんな細密な表現を!)。自分の血液を画材にしたり、愛犬の遺骨を落雁にするなど、どの作品も実にアーホ!!
三菱地所賞
水野 里奈 (多摩美術大学大学院)
《庭にはびこる》(2013)キャンバス、油彩、ボールペン/《戸棚》(2013)キャンバス、油彩、ボールペン/《絵画の為のモチーフ》(2013)ミクスドメディア
[審査員評価]
・野口玲一(三菱一号館美術館学芸グループ長)
集積された色と形が複雑で豊かなディティールを形成していて見飽きない。今回は絵画のモチーフともマケットとも言うべき立体を呈示し、色と素材が通底するトータルな世界観を見せた点も評価した。
*東京・丸の内で作品を展示することができます。
シュウ ウエムラ賞
朝倉 優佳 (女子美術大学大学院)
《scene》(2014)キャンバス、アクリル
[審査員評価]
・打出角康(シュウ ウエムラ インターナショナル アーティスティック・ディレクター)
フォービズムを思わせる強烈な色彩と激しいタッチが印象的。その場の空間を一変させる影響力がすばらしい。抽象ながらセダクションを漂わせる作風も化粧品と相性がよく思える。
シュウ ウエムラは、創業者植村秀の哲学を引き継ぎ、美とアートの融合を追求し続ける化粧品ブランドです。才能溢れる若手アーティストの育成に貢献していきたいと考え、第3回よりシュウ ウエムラ賞を設立しました。受賞者にはシュウ ウエムラのオフィシャル・ウェブサイトをはじめ、広報活動を通じて発表されます。
shu uemura art award
フランス大使館賞
崔 多情 (京都造形芸術大学)
《観察者》(2014)ミクストメディア
[審査員評価]
・ディアーヌ・ジョス(フランス大使館文化担当官)
崔多情は、成熟した高度な表現テクニックで、異文化との出会い、世界の暴力と日常生活との対立、そしてその世界における私たちの立場など、今日的問題に向き合おうとしている。様々な媒材を通し、親密でありながら普遍的な記憶を引き出している。
*アンスティチュ・フランセ東京にて作品を展示することができます。
アッシュ・ペー・フランス賞
高山 夏希 (東京造形大学)
《CAMEL Rider 2014》(2014)キャンバス、アクリル、油彩/《CAMEL Rider 2013》(2013)キャンバス、アクリル
[審査員評価]
・戸塚憲太郎(H.P.FRANCE株式会社 hpgrp GALLERY TOKYO ディレクター)
モチーフのイメージに頼らずに、独特の技法で「空気が立ち上がる感覚」を魅力的に表現している。絵具を盛り上げて作られた美しい表面が装飾的になっていないところも評価のポイント。
*アッシュ・ペー・フランスが運営する H.P.FRANCE WINDOW GALLERY (丸ビル1階)にて作品を展示することができます。
オーディエンス賞:1名
杉浦 由梨 (愛知県立芸術大学)
《○○について考えながら》(2014)ミクストメディア
[オーディエンスの声]
- 発想がとても面白かったです。(20代女性)
- ビジネスへ応用できるのではないか。(60代男性)
- まさか髪の毛が!(50代男性)
- 考えもつかないアイデアでシンプルながらハッとさせられた(30代女性)
- 日常と作品の距離が感じられた。(20代男性)
- 唯一楽しかった。心から笑った。応援します。(40代男性)
- やさしい気持ちになりました。(20代女性)
- とても透明な感じがした。(20代男性)
- この発想はなかった。(40代男性)
*観客の皆様の投票によって決定します。
投票期間:4月26日(土)〜5月11日(日)
オーディエンス賞 プレゼント *プレゼントの申込は終了いたしました。
オーディエンス賞にご投票頂いた方のなかから、抽選で5組10名様に三菱一号館美術館で6月14日から開催する展覧会「ヴァロットン―冷たい炎の画家」展の鑑賞券をプレゼントします。
パリで31万人が熱狂した「ヴァロットン」展がいよいよ日本へ!
「ヴァロットン―冷たい炎の画家」展
2014.6.14(火)~9.23(火・祝)
三菱一号館美術館(東京・丸の内)
http://mimt.jp/vallotton/
