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イベント

第20回!『~丸の内が若き才能に包まれる、次世代アート展~ アートアワードトーキョー丸の内2026』

開催期間2026.05.25(月)〜2026.06.21(日)
開催場所行幸地下ギャラリー

若手アーティストの発掘・育成を目的とした現代美術の展覧会。
20回目の開催を迎える今年は、全国18校から招待した200点の作品より、厳正な審査を通過した20作品を展示しております。
次世代を担うアーティスト達の清々しく斬新な感性が一堂に会する丸の内を、是非この機会にお楽しみください。

5月25日(月)のイベント初日には、最終審査会と表彰式を執り行い、グランプリをはじめ、審査員賞など各賞の受賞作家が決定いたしました!

01. 5月25日(月)決定!!第20回AATM受賞作家一覧

アワード初日、5月25日(月)の最終審査を経て、各賞が決定いたしました!
受賞者の皆様、おめでとうございます!

審査員 今村有策賞
OIRA(多摩美術大学)
審査員 木村絵理子賞
石岡紅緒(東京藝術大学)
審査員 後藤繁雄賞
尹 相启(名古屋芸術大学)

02. アートアワードトーキョー丸の内(AATM)とは

若手アーティストの発掘・育成を目的とした現代美術のアワード/展覧会です。
全国の主要な美術大学・芸術大学・大学院の卒業・修了制作展を審査員が訪問し、将来性のある作家をノミネート。
選考を通過した作品を丸の内エリアで展示し、最終審査によって各賞を決定します。
20回目の開催を迎える2026年度は、美術大学・芸術大学・大学院18校の卒業制作展を訪問し、約200件をノミネート。
その中から120名が応募し、審査を経て約20作品を、行幸地下ギャラリーを中心とした丸の内エリアに展示します。
ビジネスと文化が交差する丸の内という都市空間を舞台に、AATMは、アーティストと社会、企業、働く人々をつなぐ出会いの場を創出するとともに、次代を担う表現者が次のステージへと進むための機会を継続的に提供してきました。
これまでに約550名の若手アーティストを紹介しています。
過去のAATM情報はこちら:https://www.marunouchi.com/lp/aatm/

03. 作家・作品情報 ※全20作家・作品

01 トウレイ(Li Deng)/東京造形大学大学院 <フランス大使館賞>

《作品名》
名前のない植物
unnamed plants

《1次審査通過についての審査員コメント》
トウレイはフィクションの植物を、まるで本物の植物が植物図鑑・博物館・植物園で展示されるように、写真というメディアを通して作品を提示します。写真が持つ記録性を逆手に取り、フィクションをまるで現実のものとして見せることで、それは近代や科学、そして写真という制度が作り上げてきたものへの批評となっています。トウレイはそれを「別の真実」と呼び、世界の確実性を問い直しているのです。(今村有策/元東京藝術大学 副学長)

《受賞にあたっての審査員コメント》
技術の時代における、「写真」という媒体の在り方について、深い考察をもって向き合った作品です。「写真」の誕生から200年以上たった今、メディアをどのように捉えるべきなのか。AIによって生成されたイメージが氾濫する現代に、写真はいかなる現実との関係性を担っているのだろうか。
展示された架空の植物は一体どこから来たものなのか?そして、現実とはなにか?という問題には決着がつかないのである。(サンソン・シルヴァン/在日フランス大使館 文化担当官)



02 堀出奏月(Kazuki Horide)/名古屋芸術大学

《作品名》
侵食、運搬、堆積
Erosion, Transport, and Deposition

《1次審査通過についての審査員コメント》
堀出奏月さんの作品は遠くから見ていると抽象的に見えるのですが、近づくと人の形が見えてきて、そこが道路であったり、芝生であったり、水面であったりするのが見えてくる。その驚きと共に、それぞれの人の活動や関係性も見えてきて、広い宇宙のどこかの片隅での営みが感じられるのが魅力的です。(小山登美夫/小山登美夫ギャラリー代表、日本現代美術商協会顧問)



03 小出倫太郎(Rintaro Koide)/秋田公立美術大学

《作品名》
消えるが、消えない。変わるが、変わらない。
It disappears, yet does not disappear. It changes, yet does not change.

《1次審査通過についての審査員コメント》
ショッピングモールを歩く一人の青年。でもよく見ると周囲の人が次々と後ろ向きにすれ違い、実は彼だけが一人後ろ向きに歩く様子を逆再生した映像であることがわかってきます。別の作品でも、墨を塗りたくった壁に自分の体をぶつけて拭き取るような、時間の逆再生が生じています。また別の映像では、雪かきをする透明人間が、経済活動からは抜け落ちた不可視の労働を炙り出すようです。世の中の見方/視点を変えると、当たり前のものがそうではなくなるというイマジネーションの原理に、今一度気づかせてくれます。(木村絵理子/弘前レンガ倉庫美術館館長)



04 OIRA(OIRA)/多摩美術大学 <審査員 今村有策賞>

《作品名》
DX・Z・D・3=D(デラックス・ゼット・ドラゴン・スリー=デストロイヤー)
DX・Z・D・3=D(deluxe・Z・dragon・III =destroyer)

《1次審査通過についての審査員コメント》
日本は戦後にテレビで多くの怪獣を生み出してきました。多くの男の子の子供時代は怪獣が身近にいます。しかし成長に伴って怪獣は身の回りからいなくなります。しかしOIRAは怪獣の着ぐるみを作ります。自身でジャンクと呼ぶ不格好でユーモラスな着ぐるみを「コンバットスーツ」と呼ぶのです。人は社会という怪物と対峙しなくてはならない時があります。私たちもOIRAのように、自分の戦闘服を知らず知らずのうちに作っているのかもしれません。(今村有策/元東京藝術大学 副学長)

《受賞にあたっての審査員コメント》
アートは現在、世の中に溢れる表象やサブカルチャーのなかの表現を引用して作品化してきた。その文脈のなかでOIRAは表象を抽出するのではなく、あえて戦隊ものやロボットなどで表出されてきた身体拡張や変身という点に注目して着ぐるみを制作している。仮想現実を生きるための着ぐるみではなく、私たちは日常を生きるための鎧を必要としている。OIRAの作品はそのような私たちの現実への切実な応答なのである。(今村勇策/元東京藝術大学 副学長)



05 中村天嶺(Amane Nakamura)/名古屋造形大学

《作品名》
ナイトコア
Nightcore

《1次審査通過についての審査員コメント》
中村天嶺さんは日本のアニメの文脈とルネサンス絵画の形式を接続したいと言っています。確かにアニメの影響からの風景の作品ではあるのですが、中村の作品では、その現代の文化が生み出したであろう風景を、絵画という古い歴史を持つ文化が飲み込んだ感じで、美術というメディアはなんでも可能なのだなと改めて感じました。初期のミロのような世界を丸ごと描こうという意気込みが魅力的です。(小山登美夫/小山登美夫ギャラリー代表、日本現代美術商協会顧問)



06 シュ ビビ(Vivi Zhu)/東京藝術大学大学院

《作品名》
ココロ、アンロック
My Heart, (On)Unlock

《1次審査通過についての審査員コメント》
成長の過程で、フィクションからより多くの愛を学んできた東アジアの女性たち。彼女たちは、自分を本当に満足させてくれる愛の形とは何かを、現実とファンタジーの垣根を越えつつ実験し続けます。それは自分たちを抑圧する社会に対する抵抗であると同時に、自由という概念を欲望に即して変形させる行為でもあります。そうした逸脱した人々を他者とするのではなく、その生に寄り添い、共有のプラットフォームとして作品を作ろうとする意志に共感します。(藪前知子/東京都現代美術館学芸員)



07 キ イニ(Yini Ji)/成安造形大学

《作品名》
I Have No Clue Who You Are

《1次審査通過についての審査員コメント》
自分と世界の関係を考えるときに、作家はまずここから始めなくてはならなかったのだろうと思える特別な作品があります。自分が存在する根拠でありながら不在である父親の存在に、自ら母を演じAIを用いて迫ろうとするこの作品は、自己探究という、表現することの本質を鮮やかに教えてくれます。それは何かに帰結するものではなく、進めば進むほど複数の道に分かれていくプロセスなのだということも示しつつ。(藪前知子/東京都現代美術館学芸員)



08 水口理琉(Riru Mizuguchi)/東京藝術大学大学院 <大林組賞>

《作品名》
DAUB!

《1次審査通過についての審査員コメント》
作品のテーマは「巣」です。巣と聞くと外界と隔絶した個人的な場を想像しますが、作者にとって巣作りは周囲の場や人々との出会いの契機となります。その関わりの中で自身が変化し、同時に巣=作品の形も変わっていきます。単に(すでにある)自分の内面を見つめるのではなく、他者や環境との関わりの中で新たな自分を見出そうとする積極的な姿勢は、巣=作品にエネルギーを与えるとともに、それを作者にしか成し得ないものとしています。(池田祐子/三菱一号館美術館 館長)

《受賞にあたっての審査員コメント》
インスタレーションからペインティングまで、20作品を拝見させてもらった。「これまでに見たことのない、既視感がない」という作品に特に惹かれた。物を見たり物の本質をとらえる力を養うことが重要だと考えている。若いうちはそのような力を養い、積み重ねていくことも大事なことだと思う。
そのような力も携えた水口理琉さんの「巣作り」の作品はオリジナリティも高く、造形的にも非常に魅力的だった。巣をつくるというアイディアやスケールにも圧倒された。(協賛賞/株式会社大林組 取締役会長 兼 取締役議長 大林剛郎)



09 タツルハタヤマ(Tatsuru Hatayama)/東京藝術大学大学院 <グランプリ>

《作品名》
蝶の神話
The Myth of a Butterfly

《1次審査通過についての審査員コメント》
小さい断片を縫い合わせて作るパッチワークは、女性たちのコミュニティ形成の手段であり、また家庭内労働の一部として、美術や工芸の世界からは周縁的な仕事と見なされてきました。こうした構造や歴史を引き受けつつ、涙という個人のささやかな命の象徴が世界と繋がり循環する様を描いたこの作品は、モチーフと、メディアの持つ構造と歴史が分かち難く結びついた、説得力ある表現となっています。(藪前知子/東京都現代美術館学芸員)

《受賞にあたっての審査員コメント》
自分の生活圏である横浜と取手という身近な土地を地球規模の地図に置き換え、「帰り道」という短い時間の中で脳裏をめぐるイマジネーションをテキスタイルに表した作品です。しかし、一見パーソナルな時空間を相手にしているようでありながら、画面に現れるのは福島第一原子力発電所の姿など、私たちが直接・間接を問わず直面している世界の姿です。絵画や映像など、さまざまな手法に取り組んできた作者が、ここで辿り着いたパッチワークという技法の持つ「しなやかさ」と相まって、世界の事象と真摯に向き合おうとする作者の姿勢が見えてくる作品です。(木村絵理子/弘前れんが倉庫美術館 館長)



10 勝見美吹(Ibuki Katsumi)/愛知県立芸術大学大学院 <三菱一号館美術館賞>

《作品名》
同じ土俵で寝転がるために
To Lie Down on the Same Ring

《1次審査通過についての審査員コメント》
生きている人間は物理的な身体を持っており、社会は人間=身体で成り立っています。生物としての人間は基本的な組成においてみな同じです。しかし、社会は様々な規範でもって人間を、その身体を線引きします。人間が生きていく過程で、ときに理不尽に感じられるその規範と身体の問題を勝見さんは、作品を通して明らかにしようとしています。パステルカラーの布で表現される「同じ土俵」の情景は、彼女の規範に対する問いかけであり、ユーモアに満ちたひとつの回答です。(池田祐子/三菱一号館美術館 館長)

《受賞にあたっての審査員コメント》
芸術は開かれた中立地帯であり、そこは様々な意見が話され聞かれる自由で面白い場所です。勝見さんの軽やかで透過性のあるオーガンジーで作られた相撲の土俵は、その身体への親しさゆえにあらゆる人々を、その中に誘います。また柔らかな色合いと触感が、ユーモアをもって土俵での対話を促します。それは対立に支配された今の世界に、一番必要なものだと思います。(池田祐子/三菱一号館美術館 館長)



11 アイラゴン(Ayalguun)/京都芸術大学大学院

《作品名》
人間の第三の呼吸
The Third Breath of Human

《1次審査通過についての審査員コメント》
2000年に中国・内モンゴル自治区に生まれたアイラゴンは、遊牧文化から牧畜文化へ移行する環境の中で育った。彼の作品のコンセプトは「編む」である。髪を編み、縄を編み、音やコトバを編んでいく。「三つ編み」の3は、2項対立ではなく、物質、コトバ、時間の、より複雑な作品を生成・成長させる動因である。また、彼自身がホーミー(喉歌)を歌い楽器を奏でるパフォーマーであり、彼の身体は生み出すインスタレーションの要にある。時空がますます破壊される現代において、その姿は、世界再生の儀式にも見える。(後藤繁雄/編集者、クリエイティブディレクター、京都芸術大学名誉教授)



12 植田大誠(Taisei Ueta)/武蔵野美術大学

《作品名》
signboard holder 竜宮城まで
signboard holder to the Ryugu Castle

《1次審査通過についての審査員コメント》
本作品は、監督からの指示に従い、誰も通りかかることのない場所で、存在しない場所「竜宮城」に向けた案内をし続ける「労働者」のビデオです。日雇いで、8時間労働1時間休憩で働き続ける姿が撮影されています。一見何が起こっているのかわからないナンセンス的なビデオですが、そこには現代日本に存在する「徒労」をテーマとした批評的な眼差しがあります。ナンセンスと批評を組み合わせるアプローチがユニークな作品です。(今村有策/元東京藝術大学 副学長)



13 トウセイヨ(TANGQINGYU)/京都芸術大学大学院

《作品名》
When She Begins to Grow Inside the Empty Vessel

《1次審査通過についての審査員コメント》
菌類や髪の毛といった、増殖するもの、伸びていくもの、中心もなく存在と非存在のあわいにあるようなもの。それに名をつけ遠くにいる誰かへの愛着を託すというこれらの作品は、固有のアイデンティティという概念を、解体し、他者との関係によって初めて形をなすような何かへと再定義するものと言えるのではないでしょうか。そのようなあえかな存在として互いをイメージする実践は、既存の世界の見え方を変えてくれる予感に満ちています。(藪前知子/東京都現代美術館学芸員)



14 鄒 名森(Mingsen Zou)/多摩美術大学大学院 <審査員 藪前知子賞>

《作品名》
大きな独白
The Great Monologue

《1次審査通過についての審査員コメント》
本作品《大きな独白》は、そのタイトルとは裏腹に、3台の古いDVDプレーヤーを用いた小さな画面による作品です。AIを用いた魅力的なアニメーションや実際の記録と見まごうばかりの映像には、鄒さん自身の手になるテキストが、これもAI翻訳と音声によって添えられています。AIが孕む真偽の問題と同時に、ここではアイロニーを交えて、対話の非対称性や閉ざされた世界の独白、単純な言葉の壮大な政治化、といったアクチュアルな問題が提示されています。(池田祐子/三菱一号館美術館 館長)

《受賞にあたっての審査員コメント》
近年のAATMは、特にアジア各国からの留学生の入選が増え、それぞれ距離や文化的な差異、ルーツを辿る旅など説得力ある表現を生み出しています。個人賞の鄒名森さんの作品も、民族主義や排外主義に繋がる「大きな声」を、それを伝えるメディア自体との関係で表現しており、今、見るべき表現であると感じました。(藪前知子/東京都現代美術館 学芸員)



15 小田原亜梨沙(Arisa Odawara)/多摩美術大学 <審査員 建畠晢賞>

《作品名》
道の途中
On the way

《1次審査通過についての審査員コメント》
絵が立ち上がり、育ち構成されて行くのは、大声の主義や理論ではなくて、何気ない日常の中での呟きや、微かだがはっきりした日々の手触りの中からである。小田原亜梨沙の描く絵の魅力は、そこから生まれてくる。友人との会話の名残、振り返るとそこには芝生に集う「キャンバス」風景であったり。時には「光化学スモッグ」の日常。「道の途中」や「タオル」が描かれたりもしている。それらすべては、行動の断片であり、身近な出来事だ。でも、それ以上のリアルもあるはずもないのである。彼女が水彩で描くドローイングは、そのような他愛ないが、大切な日々の記録である。しかし、厳密にいうと正確な描写や記録とはずいぶんちがっている。
重要なのは、日々、手を動かして、画面につまり絵として何かが生まれていくことの記録なのだ。その絵の中の住人たちは、実在したかも知れないが、もはや今はその実在から切り離され、小田原亜梨沙の絵の中で、まるで古代の壁画の住人のように、時空を超えた確かなものとしてそこにある。(後藤繁雄/編集者、クリエイティブディレクター、京都芸術大学名誉教授)

《受賞にあたっての審査員コメント》
小田原亜梨沙の作品はドローイング、油彩共にきわめて独自の世界をなしており、日常的な人物の光景に不可思議な気配を含ませている点にも魅せられた。スタティックな構成ならではのポエジーと言ってもよい。(建畠晢/多摩美術大学 名誉教授)



16 何梓羽(KASHIU)/武蔵野美術大学大学院 <審査員 小山登美夫賞>

《作品名》
リアリストが追放地にて ver.3
The Realist in the Penal Colony

《1次審査通過についての審査員コメント》
中国·四川省出身の何梓羽の作品の「問い」は、ヒトがなぜ、その物事を真実と感じるのか、リアリティと感じるのか、にある。彼女の大学院修了作品「リアリストの占い Ver.1」は、AI占いをヒントに、「信仰、占い、アルゴリズム、労働、社会秩序」といったシステムを、鑑賞者に体験させる装置であった。その検証不可能なフィクションがリアルな信憑性を帯びる矛盾を提示した。そして、AATMでの出展作品《リアリストが追放地にて》は、小説家カフカの作品『流刑地にて』に着想を得て、ローブや歯車からなる未完成な機械が、未完成ながらも動き続ける装置である。まき込まれる観客もまた、悪無限の社会装置の一部にならざるを得ない。何梓羽が生み出す装置が、ライトでカラフルな日用工業製品を使うところも、我々が「流刑地」にいる宿痾をアイロニカル/ユーモラスに告げる。(後藤繁雄/編集者、クリエイティブディレクター、京都芸術大学名誉教授)

《受賞にあたっての審査員コメント》
何梓羽さんの装置は、見る人が何かを体験でき、巻き込まれることになります。そこでは細部がじわじわと作用し見る人に影響を与え続ける。それが物体としての美術の面白さであって、何梓羽さんの巨大なインスタレーションがいつの日か見られること、巻き込まれることを願っています。(小山登美夫/小山登美夫ギャラリー 代表、日本現代美術商協会 顧問)



17 松田乃音(Nono Matsuda)/金沢美術工芸大学

《作品名》
Tender

《1次審査通過についての審査員コメント》
大人の身体がすっぽりと収まりそうな袋の内側には、色鮮やかな鉱物の地層のようにも、遠くから望む花畑や、あるいは内臓や肉、血管にも見えるような自然な色が重ねられています。例えばこれを身に纏った姿を想像すると、自分を守る新たな皮膚や脂肪、あるいは子宮のようにも感じられるかもしれません。一方で四方から引っ張って釣り下げられた状態にあることで、引き剥がされた皮膚のようにも見えてきます。守られる感覚と、曝け出された感覚、社会生活における相反する身体感覚を同時に呼び覚ますようです。(木村絵理子/弘前レンガ倉庫美術館館長)



18 白井桜子(Sakurako Shirai)/京都芸術大学大学院 <審査員 小牟田悠介賞>(特別審査員)

《作品名》
装う視線
The Adorned Gaze

《1次審査通過についての審査員コメント》
白井桜子さんの作品は、色や形の美しさはもちろんですが、空間に対するアプローチがユニークだと思います。キャンバスの端が立ちあがっていたり、隙間を作って奥に挟み込んでいたりして、空間を画面の上に実際に作っていく。空間は奥にも手前にも広がっていきます。それは触覚に強くうったえかけてくる。人は見ることができるだけなのですが、いくつもの感覚を体験することができる。そこが魅力的だと思いました。(小山登美夫/小山登美夫ギャラリー代表、日本現代美術商協会顧問)

《受賞にあたっての審査員コメント》
服を選ぶことや原風景など、身近な視点や記憶を起点に制作を展開し、素材の裏側や制作過程に現れる表情を丁寧に受け止めている点に共感した。
言葉になりきらない素材の魅力を、白井さんがこれからも探り続ける姿が想像できた。(小牟田悠介/アーティスト、AATM2007出品作家)



19 尹 相启(Xiangqi Yin)/名古屋芸術大学 <審査員 後藤繫雄賞>

《作品名》
放物線
Parabola

《1次審査通過についての審査員コメント》
戦争における無人兵器やAIの使用が、あたりまえ化している中で、ヒトのイメージ生成と認知はどのように変容をせまられているのか?尹のアート作品の問題意識はそこにある。彼は、写真、インスタレーション、映像、装置を組み合わせ、観客が、どのような権⼒構造、歴史記憶、技術メディアの中におかれているか、その体験をせまるのである。AATMでの展示作品は、人類がその起源から持つ「投擲」をテーマとする。つまりそれは、現代におけるミサイルやドローン、投石や、棍棒の使用に共通する遠距離的な暴力(ヒトの身体的な限界を超えた)をテーマとすることに繋がる。尹は、「放物線と標的」を使い、このことを可視化する。我々の日常的に使用されている暴力が、普遍的な物理法則の因果に縛られる宿命を、尹は冷徹に我々に突きつけるのである。(後藤繁雄/編集者、クリエイティブディレクター、京都芸術大学名誉教授)

《受賞にあたっての審査員コメント》
写真、インスタレーション、映像、装置を組み合わせて、今日的な暴力の可視化を問題意識とする。ターゲットと放物線という表象を使い、また日常的な写真を組み合わせ、見る人に物語を喚起することに成功している。期待できる才能だ。(後藤繁雄/編集者、クリエイティブディレクター、京都芸術大学 名誉教授)



20 石岡紅緒(Benio Ishioka)/東京藝術大学 <審査員 木村絵理子賞>

《作品名》
ユニット
Uknit

《1次審査通過についての審査員コメント》
手編みのニットの上に、絵具で作者の友人たちの顔が描かれており、中には二つのセーターが混ざり合って一着になったものもあります。映像の中では、このニットがどんどん解かれて、一本の毛糸に戻ってしまう様子が映され、ここから再び同じニットが編み上がる可能性は極めて低いことが想像できるでしょう。たとえ全く同じ遺伝子を持って生まれても、互いの人生が異なるように、私たちの人間関係や、多様な生き方の中で育まれるそれぞれのアイデンティティーは、手編みのニットと同じくらいに不可逆的で唯一のものであることを思い起こさせます。(木村絵理子/弘前レンガ倉庫美術館館長)

《受賞にあたっての審査員コメント》
ファイン・アートの歴史を振り返った時に、ニットとは、非主流、あるいはそもそもアートの枠外に置かれてきた技法です。一方で被服としてのニットは、世界中で大半の人が身に纏ったことのある身近な素材でもあります。こうしたニットという素材が持つ歴史の中での「柔らかさ」、「可塑性」、一度解いてしまうと元には戻らない「不可逆性」など、人間社会のコミュニケーションの構造を視覚化するような作品として見えてきます。(木村絵理子/弘前れんが倉庫美術館 館長)

04. 審査員

今村 有策(Yusaku Imamura)
元東京藝術大学 副学長


木村 絵理子(Eriko Kimura)
弘前れんが倉庫美術館 館長


後藤 繁雄(Shigeo Goto)
編集者、クリエイティブディレクター、京都芸術大学 名誉教授


小山 登美夫(Tomio Koyama)
小山登美夫ギャラリー 代表、日本現代美術商協会 顧問


建畠 晢(Akira Tatehata)
多摩美術大学 名誉教授


藪前 知子(Tomoko Yabumae)
東京都現代美術館 学芸員


小牟田 悠介(Yusuke Komuta)
アーティスト、AATM2007出品作家
<特別審査員>


池田 祐子(Yuko Ikeda)
三菱一号館美術館 館長

05. 審査員コメント ~一次審査を終えて~

多摩美術大学 名誉教授
建畠 晢(Akira Tatehata)

総じていえば、私的な発想による、広い意味での物語性を宿した表現が多かったように思う。コンセプチュアルな傾向の作品でも、禁欲的な理知性ではなく、多少なりともインティメイトな気配を有しているのである。この世代ならではのネオポップ的な感覚が共有されているともいえようが、しかし興味深いのは(何も今回に限ったことではないが)、そこになにがしか地域的、環境的な特色が見て取られもすることだ。

編集者、クリエイティブディレクター、京都芸術大学 名誉教授
後藤 繁雄(Shigeo Goto)

古来より、優れたアーティストは、「坑道のカナリア」になぞらえられる。地底で働く鉱夫たちが、来るべき災害を予知するためにカナリアの力を借りたことに由来する。アートアワードトーキョー丸の内の審査で全国の美術大学の卒展・修了展で、アーティストたちの作品に対面するたびに、その作品が、どのような未来を予知するシルシなのかと思わせられる。
しかし、今や未来は単純なものではあり得ない。真実とフェイク、見えないものと見えるもの、善と悪、敵と味方、私と世界、希望と絶望などが、2項対立ではなく、全て入り混じって分離できない社会にたどりついているからだ。
AATMの本年の審査においても強く印象に残ったのは、アーティストたちが、その複雑さを何とかして可視化しようと奮闘している姿、作品である。受け狙いの紋切り型の作品には、魅力がなく、より複雑な道を歩む作品が可能性を持ち、光を放っているように感じた。終わりなき世界を感じさせてくれることが、AATMに結集したアートの力なのだと、改めて感じた。

06. AATM2026 サテライト展

第一回目の開催となったAATM2007に参加し、現在も活躍を続ける4名のアーティストの作品を紹介する特別展を開催いたします。

■日時:2026年5月25日(月)~6月21日(日)
■会場:三菱一号館美術館 Espace 1894
■出展アーティスト:小牟田悠介さん 谷澤紗和子さん 抜水摩耶さん 安田 悠さん(2007年参加)

小牟田 悠介

大阪府生まれ。2007年 京都造形芸術大学芸術学部美術工芸学科総合造形卒業。2009年 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。二次元と三次元を行き来しながら、次元を超えた空間や時間の広がりをも織り込む作品世界を探求する現代美術作家。主な個展に、「Unfolding Structure」(Galerie Zink、Germany)2024、「新しい天体」(SCAI THE BATHHOUSE、東京)2022、「space | aspec」(PARCEL、東京)2019がある。

Photo:Reiko Masutani

谷澤 紗和子

大阪府生まれ。2007年 京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。京都市立芸術大学准教授。美術制度の外に置かれてきた素材や技法を用い、想像力を解放する装置としての作品を制作する。主な展覧会に「プラカードのために」(国立国際美術館)2025、「かわるあいだの美術2024 〈物語る予感〉」(鹿児島市立天文館図書館)2024、「VOCA展2022現代美術の展望 -新しい平面の作家たち-」(上野の森美術館)などがある。

抜水 摩耶

京都府生まれ。2012年より東京に活動の拠点を移す。旧京都造形芸術大学大学院芸術表現専攻修了。大学時代より田名網敬一に師事。幼少期より多大な影響を受けた漫画カルチャーをバックボーンに、無限に存在する「主人公」たちを肯定的に描く。国内外で作品発表を重ねる傍ら、マカロニえんぴつ、私立恵比寿中学のCDジャケットアートワークを手がけるなど幅広く活動中。近年の主な個展に、「STRANGE STRANGERS」(OIL by 美術手帖ギャラリー、東京、2025年)などがある。

安田 悠

香川県生まれ。2007年 武蔵野美術大学大学院油絵コース修了。時間や空間の流れ、風景を連想させる流動的な世界を印象的なタッチと色彩で描く美術作家。これまでの主な展示に「VOCA展 2008」(上野の森美術館)、「Art in an Office」(豊田市美術館)、「横浜美術館コレクション 光をめぐる表現」(横浜美術館)、「NEWoMan ART Wall 2022」(NEWoMan shinjuku)などがある。

yuyasuda
小牟田 悠介 《Unfolded #40》2023
谷澤 紗和子 《お喋りの効能 -ツボとめぐり-》2025
© 2025 EUREKA
抜水 摩耶 《STRANGE STRANGERS》2025
安田 悠 《Recall 24-01》2024
© yuyasuda

07. あなたの推し作家を教えてください!(MARUNOUCHI WORKERS賞/就業者人気投票)

MARUNOUCHI WORKERS限定!作品を見て、「推し作家」に投票してみませんか?
あなたの一票が《MARUNOUCHI WORKERS賞》を決めます。

会場(行幸地下ギャラリー)またはリーフレット記載のQRコードからチェックしてみてください。
投票してくれた方の中から、抽選で30名様に丸の内ポイント2,000ポイントが当たるチャンスもあります!

基本情報

開催期間

2026年5月25日(月)~6月21日(日) 

時間

11:00~20:00 ※最終日のみ18:00まで

場所

行幸地下ギャラリー

主催

三菱地所株式会社

協賛

株式会社大林組、公益財団法人アイスタイル芸術文化財団、一般財団法人川村文化芸術振興財団、大和証券グループ、能美防災株式会社、丸の内熱供給株式会社

後援

三菱一号館美術館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

お問い合わせ

丸の内コールセンター
TEL:03-5218-5100(11:00~21:00)
※但し、日曜・祝日は20:00まで(連休の場合は最終日のみ20:00まで)

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