アワード/Awards

西 太志Taishi Nishi
京都市立芸術大学大学院

錯綜する筆触で埋め尽くされたタブローの前に不穏なオブセッションを秘めた焼物の少年像を配した空間だが、そこには作者が画家である自らの内面を省察するかのような特異な緊張感のあるナラティブが醸し出されている。
ゴヤの〈黒い絵〉に惹かれるという西ならではの不可思議な存在感のある作品を高く評価したい。
(建畠 晢 /多摩美術大学学長、埼玉県立近代美術館館長 )

田中 彰Sho Tanaka
武蔵野美術大学大学院

作ることを自明のものとせず、なぜそれを作らなければならないのか考えることを制作のスタートとしている点を評価した。
それによって生きることと制作することのより切実な関わりを探ることができるのではないか。
(野口玲一 / 三菱一号館美術館 学芸員)

田中さんの作品は世界の問題をいまここにある自分のこととして捉え、個人として請け負うことによって生まれています。
そして歴史の中にいたであろう同じ思いを持った人間と出会い、それに寄り添いながら語ろうとしています。
その真摯で親密なアプローチによる素晴らしい作品に出会えたことをうれしく思います。
(今村有策 / トーキョーワンダーサイト館長)

田島大介Daisuke Tajima
愛知県立芸術大学

怒りと悔しさ、内に抱えた世界に対する負の感情をどう吐露していくか、それを表現に昇華させるエネルギーを持った作品でした。
アニメにインスパイアされながらそのファンタジー性を捨てさり、独自の世界を築きつつある過程。
次にどんな風景を見て世界を広げていけるかに期待します。
(神谷幸江 / 広島市現代美術館 チーフキュレーター)

玉山拓郎Takuro Tamayama
東京藝術大学大学院

ヒロイックでなく、後もどりしない。
歴史性やアートの文脈から離れて生きることの孤立と自由。
玉山拓郎の作品は、安くて超表層的である。ユートピアではなく、ノートピア。IN THE OFFING。
沖に出る。もうもどれない。その可能性。
(後藤繁雄 / 編集者、クリエイティブディレクター、
京都造形芸術大学教授)

大和美緒Mio Yamato
京都造形芸術大学大学院

点をひとつひとつ描いていくことで、出来あがっていく揺らぎのなかに浮かびあがる空間。
そこにとても強くピュアな深さが見えてきて、気持ちいい。
日々の雑音と急に音が止まった瞬間を感じることが出来る。
(小山登美夫/小山登美夫ギャラリー代表、
明治大学国際日本学部 特任准教授)

小林あずさAzusa Kobayashi
東京藝術大学大学院

コンセプトと身体的感覚のバランスの上に築かれた作品世界。
思考と感性のせめぎあいが独自のイメージの領域をつむぎ出す。
色彩に裏打ちされたマテリアルとジャンルの多様性もまた、作者の表現の不思議な魅力を増幅している。
(高橋明也 / 三菱一号館美術館館長)

額賀苑子Sonoko Nukaga
東京藝術大学大学院

俯角で捉えられた男女二体の白い裸体が高い台座に乗せられているが、台座の上面が急傾斜しているために、写実的であるはずの造作が、見る角度によっては奇妙に歪んだパースペクティブを感じさせずにはおかない。
コンセプチュアルなシャープさと独特の官能性とを共存させ得ている空間に魅せられた。
(建畠 晢 / 多摩美術大学学長、埼玉県立近代美術館館長 )

奥村彰一Shoichi Okumura
多摩美術大学

洗練された色使いと、伸びやかでセンス溢れるモダンな山水画に引き込まれました。
「桃源郷への訪問」と作家が願う女性の描写は、どこまでも艶やかで京劇からインスパイアされたメイクアップも作品のアクセントとして高い完成度を感じました。カルチャーミックスから生まれる今後の作品も楽しみにしています。
(村岡晴美 /シュウ ウエムラ コスメティックス株式会社
広報宣伝統括マネージャー)

鈴木のぞみNozomi Suzuki
東京藝術大学大学院

アーティストの方々の作品集の質の高さや、展示作品の芸術的成熟度に、大変深い感銘を受けました。選考の結果、今年のフランス大使館賞の受賞者は、東京藝術大学大学院の鈴木のぞみさんに決定いたしました。
鈴木さんは、事物やその持ち主の写真をフレームや窓枠に中に置き、記憶について問いかける喚起力の高い作品を作りました。無名の人々の記憶を用いた、類まれなる強度を持ったその作品は、人の心を打ち、その構成力において知性を感じる作品です。
鈴木のぞみさんの質の高い作品に、心から敬意を表しますとともに、アンスティチュ・フランセ東京にて、鈴木さんの作品を展示することができますことを、大変光栄に存じます。
皆さまの益々のご健勝を心よりお祈りいたします。
(ディアーヌ・ジョス /フランス大使館 文化担当官)